冷徹営業トップは私の限界オタクでした

6月初めの月曜日。今日から陽菜子は経理部の自分のデスクへ戻った。

「陽菜子ー!おかえり。2週間近くいなくて寂しかったよ~。」

同僚の恵美は陽菜子に抱きつきながら言った。

「ねぇ、今月は寺内さんが営業成績1位だったんだって。」

「そうなんだ。寺内さんもすごいね。」

そのときは、神崎が一位ではなかったことを深く考えなかった。
お手洗いへ入り、個室にいると、手洗い場の方から話し声が聞こえてきた。

「神崎さん今月一位じゃなかったんだって。」

「えーそれって初めてじゃない?なんで?」

「最近、会社にいることが多かったらしいよ。社員食堂でもよく見かけたって。」

「え?神崎さんてランチもだいたい会食して、会社にほとんどいないんでしょ?」

「それがさ――」
二人の話し声は、お手洗いの扉が閉まる音とともに遠ざかっていった。

陽菜子の頭に、この二週間の神崎の姿が次々と浮かんだ。
隣のデスクに座っていたこと。社員食堂で一緒に昼食をとったこと。自分を心配して、外回りを減らしていたこと。

「……私のせい?」

誰にも届かない小さな声が、個室の中に消えていった。