その黒曜、あまりに気高く、あまりに最狂


今から1年以上前、私立鳳学園に入学して間もない春の夜。


1年の九条澪は、一人で漆黒の単車を走らせ、深夜の臨海エリアにいた。


当時から学年トップの優等生


だけど、誰にも言えない圧倒的な武力と孤独を抱えていた彼女は、


夜の風を浴びることでしか、その行き場のない衝動を抑えることができなかった


「……はぁ」


単車を止め、ヘルメットを脱いでため息をつく


乱れのない黒髪ストレート。丁寧な仕草。


だけど、誰も寄せ付けない冷徹なオーラが彼女を包んでいた


その時、バリバリバリと軽い排気音を響かせて、1台の派手な単車が隣に滑り込んできた


乗っていたのは、少し長めの茶髪を揺らした同級生――三浦颯太だ


彼は当時から、学園でも有名なチャラい一匹狼の不良だった。


颯太は澪の顔を見るなり、ヒューッと口笛を吹いてヘルメットのシールドを上げた


「ねえねえ、そこの綺麗なお嬢様。一人でこんな寂しい場所にいるなんて、俺と走ってほしいって合図? 良かったら隣、乗せてあげよっか」


チャラチャラとしたタメ口。


澪は眉一つ動かさず、底冷えのするような冷たいキャットアイで颯太を一瞥した


「……どいてください、邪魔です。あなたのような品性のない方と、夜の街を徘徊するつもりはありませんので」