その黒曜、あまりに気高く、あまりに最狂

「あははは! 最強! マジで最狂じゃんお前! 惚れたわ、俺!」

「気安く話しかけないでいただけますか」

冷たくあしらって単車に跨ろうとする澪。

だが、颯太はその前に回り込み、ポケットから『何か』を取り出して、澪の前に差し出した

それは、シンプルな黒い革製のチョーカーだった。

「お嬢様、首元がちょっと寂しいんじゃない? これ、いーやつだからあげる。……いつかお前がチームを作るなら、俺を一番最初の部下にしてよ。いや、相棒、かな」

颯太は照れくさそうに笑いながら、いつものチャラい、でも真っ直ぐなタメ口でそれを差し出した

誰も信じず、孤独に戦ってきた澪は、そのチョーカーと、颯太のブレない瞳をじっと見つめた

「……趣味が悪いですね。私は誰とも群れるつもりはありません」

澪はそっけなくそう言うと、チョーカーをひったくるように受け取り、爆音を響かせて夜の街へと消えていった

――そして、現在。

地下格闘技場での激闘を終え、傷だらけになりながらも立ち上がる総長・レイ

彼女は神代を睨み据える前、細い指先で、首元にあるあの『黒いチョーカー』を愛おしそうにそっと直した

あの日、チャラい相棒がくれた、始まりの黒。

これがあるから、彼女はどんな戦いでも、絶対に折れない最強の総長でいられるのだ

リング下でそれを見た颯太は、フッと不敵に笑い、心の中で呟く

(やっぱり、お前にはそれが一番よく似合ってるよ、レイ)

2人の絆は、あの静かな春の夜から、何一つ変わらずに繋がっていた。

(終)