記憶の欠片

 私は、はっきりと思い出してしまった。


 胸の奥に沈めていた記憶が、夜空に浮かぶ星みたいに、ひとつひとつ光を取り戻していく。


 すっかり忘れていた——いや、忘れたふりをしていただけだった。


 あの日、星に託した願い事。


 「また二人で見ようよ」と、確かに交わした約束。


 慧と並んで、ただひたすら煌めく星を眺めて、夜が白み始めるまで語り合っていた日々。


 寒さに肩を寄せ合って、眠くて、でも帰りたくなくて、空が少しずつ色を変えていくのを黙って見ていた。


 あの時間は、確かに私の人生の一部だった。


 さっき流れた、あの一瞬の輝く星。


 胸が強く締めつけられたのは、偶然なんかじゃない。


 あれは——慧と一緒に見なきゃ、意味がない。


 彼はもう、この約束を忘れてしまったかもしれない。


 時間が流れて、たくさんの出来事があって、想いがすれ違って。


 忘れてしまうには、十分すぎるほどの年月があった。


 それでも。


 それでも私は、思い出してしまった。


 あの夜の温もりも、手を握った感触も、星に願った「また」という言葉も。


 だから、一度でいいから。


 もう一度だけでいいから。


 慧と、同じ空を見たい。


 同じ星を見上げて、同じ瞬間に息をのんで、同じ光を心に刻みたい。


 それが叶わなくてもいい。


 拒まれても、すれ違ってもいい。


 でも——あの約束を、私の中だけの思い出にして終わらせるのは、まだ早すぎる。


 夜空を見上げながら、私は静かに決めていた。


 この想いから、もう逃げない。