これは、診察だ。

そして迎えた、休日。



病院の白衣を脱ぎ捨てた蓮は、黒のシンプルなシャツにジャケットという私服姿で、待ち合わせの場所に立っていた。



普段の厳しい医師の顔とは違う、大人の男性の魅力に、葵は再び一瞬で心臓を撃ち抜かれる。



「……似合ってるか?」



少し照れくさそうに微笑む蓮に、葵はブンブンと勢いよく首を縦に振った。



「とっても、かっこいいです……!」



その日は、水族館から静かなカフェへと巡り、二人だけの穏やかな時間を過ごした。



患者を救うときに見せる真剣な顔とも、病棟で見せるドSな顔とも違う、葵だけに向けられる優しく柔らかな笑顔。



蓮の隣を歩くたび、あの高校時代のロビーで胸を撃ち抜かれた瞬間からずっと、この人のために看護師になると走り続けてよかったと、心の底から実感した。



夜遅く。デートの帰り道、二人は葵の部屋へと向かっていた。



部屋の鍵を開け、電気をつけようとした葵の背後から、蓮がふっと回り込むように抱きしめる。



「っ……先生?」



「外では散々我慢した。……今日は、もう離さない」



低い声で耳元に囁かれ、葵はたまらず振り返り、蓮の胸に顔をうずめた。



「私……本当に夢みたいです。あの日、あの病院で先生に一目惚れして……そこから一生懸命頑張って、本当に良かったです」



葵の髪を優しく撫でながら、蓮は愛おしそうに微笑んだ。



「あの日、お前が俺を見つめていた時から、実は俺もお前に惹かれていたのかもしれないな。……頑固で、泣き虫で、誰よりも命に真っ直ぐな、俺のたった一人の看護師」



「先生……好きです」



「知ってる。……ほら、こっちを向け」



促されるまま顔を上げると、蓮の優しい瞳がまっすぐに葵をとらえた。



重なり合う唇は、あの夜の「診察」よりもずっと甘く、そして温かい。



「これからも、俺の隣で患者を救え。そして、俺のことも一生、お前が救い続けろよ」



「はいっ……!」



ドSでクールなエリート医師と、一途で不器用な新人看護師。



白衣の裏側に隠された二人の恋は、これからもずっと、お互いの手をしっかりと握り合いながら、最高に温かい未来へと続いていく――。