結局美術室には何もなかった。
「……ここにいても始まらない。次のアイテムを探しにいこう」
ハルトの冷徹な声が響く。
彼は叶の裏切り?に1ミリも動揺していなかった。
ただ私の肩を抱き寄せ、優しく歩き出す。
私たちは次なる目的地、3階の『図書室』へと向かった。
階段を上がる足音が、暗い校舎に不気味に反響する。
生き残ったメンバーの距離は、明らかに開いていた。
お互いが「こいつが次に取り憑かれるんじゃないか」と疑っているからだ。
図書室の重い木の扉を開けると、ひんやりとした紙の匂いが鼻を突いた。
懐中電灯の光で本棚をなぞる。
「おい……あそこ、何か落ちてないか?」
男子の1人が、奥の読書スペースを指差した。
机の上に、ぽつんと置かれていたのは、一冊の古びた「スケッチブック」だった。
「あれ、『あの子』がいつも持ち歩いてたやつだ……」
私が一歩近づこうとした、その時。
バタン!!!
と激しい音を立てて、図書室の入り口の扉が外側から閉まった。
「いやあああっ!」「開かねえ! クソ、誰か外から押さえてるのか!?」
男子たちが必死にドアノブを回すが、ピクリとも動かない。
その時、部屋の隅、本棚の影から、カツン……カツン……と、ローファーが床を叩く音が近づいてきた。
「……逃げ、られ、ない、よ」懐中電灯の光を向けると、そこに立っていたのは、さっきまで一緒に歩いていたはずの女子生徒の1人、雨永 奈々だった。
彼女の首はありえない角度で右に折れ曲がり、口からはだらりと黒い液体が滴り落ちている。
「嘘だろ、お前もいつの間に……っ!」
「あはははは! みんな、あの子のこと、ゴミみたいに無視したよねえ!」
彼女――彼女に取り憑いた怨念が、金切り声を上げて跳びかかってきた。
「うわあああ!」
図書室の中は、本棚がドミノ倒しになる轟音と、逃げ惑う悲鳴でパニックになった。
「真衣、机の下に!」
ハルトが私の手を引き、大型の机の下へ滑り込ませる。
ハルトは自分の身体で私を覆い隠すようにして、強く抱きしめた。
「ハルト、怖い、怖いよ……!」「大丈夫だ、俺がここにいる。絶対に美羽には触れさせない」
至近距離で聞こえるハルトの心臓の音。
その激しい鼓動とは裏腹に、ハルトの瞳は驚くほど冷静に、本棚の向こうで繰り広げられる惨劇を見つめていた。
「ギャあああああ!」悲鳴が1つ、消えた。
その瞬間、机の上に置かれていたスケッチブックのページが、風もないのにバサバサと勢いよくめくれ始めた。
懐中電灯の光が、開かれたページを照らし出す。そこに描かれていたのは、真っ黒なクレヨンで塗りつぶされた、『あの子』の顔の絵だった。そしてその下には、血のような赤で、こう書き殴られていた。
『 ぜ ん ぶ 、 叶ちゃん の せ い 』スマホが震える。
画面を見ると、いじめられていた『あの子』の、最後の日の日記の文面が映し出されていた。
『叶ちゃんが、明日みんなで私を屋上に呼び出すって言ってた。真衣ちゃんだけは助けてくれるよね? だって、親友だもんね――』
「ひっ……!」
私の喉が恐怖でひきつる。
次の瞬間、私のすぐ近くで、叶が狂ったような声を上げて笑い出した。
「あはは! そうよ、私のせいよ! だから何!? 私が死ねば満足なの!?」
叶の目はすでに血走り、正気を失いかけていた。
彼女に向かって、取り憑かれた女子生徒が、ゆっくりと牙を剥きながら近づいていく
「……ここにいても始まらない。次のアイテムを探しにいこう」
ハルトの冷徹な声が響く。
彼は叶の裏切り?に1ミリも動揺していなかった。
ただ私の肩を抱き寄せ、優しく歩き出す。
私たちは次なる目的地、3階の『図書室』へと向かった。
階段を上がる足音が、暗い校舎に不気味に反響する。
生き残ったメンバーの距離は、明らかに開いていた。
お互いが「こいつが次に取り憑かれるんじゃないか」と疑っているからだ。
図書室の重い木の扉を開けると、ひんやりとした紙の匂いが鼻を突いた。
懐中電灯の光で本棚をなぞる。
「おい……あそこ、何か落ちてないか?」
男子の1人が、奥の読書スペースを指差した。
机の上に、ぽつんと置かれていたのは、一冊の古びた「スケッチブック」だった。
「あれ、『あの子』がいつも持ち歩いてたやつだ……」
私が一歩近づこうとした、その時。
バタン!!!
と激しい音を立てて、図書室の入り口の扉が外側から閉まった。
「いやあああっ!」「開かねえ! クソ、誰か外から押さえてるのか!?」
男子たちが必死にドアノブを回すが、ピクリとも動かない。
その時、部屋の隅、本棚の影から、カツン……カツン……と、ローファーが床を叩く音が近づいてきた。
「……逃げ、られ、ない、よ」懐中電灯の光を向けると、そこに立っていたのは、さっきまで一緒に歩いていたはずの女子生徒の1人、雨永 奈々だった。
彼女の首はありえない角度で右に折れ曲がり、口からはだらりと黒い液体が滴り落ちている。
「嘘だろ、お前もいつの間に……っ!」
「あはははは! みんな、あの子のこと、ゴミみたいに無視したよねえ!」
彼女――彼女に取り憑いた怨念が、金切り声を上げて跳びかかってきた。
「うわあああ!」
図書室の中は、本棚がドミノ倒しになる轟音と、逃げ惑う悲鳴でパニックになった。
「真衣、机の下に!」
ハルトが私の手を引き、大型の机の下へ滑り込ませる。
ハルトは自分の身体で私を覆い隠すようにして、強く抱きしめた。
「ハルト、怖い、怖いよ……!」「大丈夫だ、俺がここにいる。絶対に美羽には触れさせない」
至近距離で聞こえるハルトの心臓の音。
その激しい鼓動とは裏腹に、ハルトの瞳は驚くほど冷静に、本棚の向こうで繰り広げられる惨劇を見つめていた。
「ギャあああああ!」悲鳴が1つ、消えた。
その瞬間、机の上に置かれていたスケッチブックのページが、風もないのにバサバサと勢いよくめくれ始めた。
懐中電灯の光が、開かれたページを照らし出す。そこに描かれていたのは、真っ黒なクレヨンで塗りつぶされた、『あの子』の顔の絵だった。そしてその下には、血のような赤で、こう書き殴られていた。
『 ぜ ん ぶ 、 叶ちゃん の せ い 』スマホが震える。
画面を見ると、いじめられていた『あの子』の、最後の日の日記の文面が映し出されていた。
『叶ちゃんが、明日みんなで私を屋上に呼び出すって言ってた。真衣ちゃんだけは助けてくれるよね? だって、親友だもんね――』
「ひっ……!」
私の喉が恐怖でひきつる。
次の瞬間、私のすぐ近くで、叶が狂ったような声を上げて笑い出した。
「あはは! そうよ、私のせいよ! だから何!? 私が死ねば満足なの!?」
叶の目はすでに血走り、正気を失いかけていた。
彼女に向かって、取り憑かれた女子生徒が、ゆっくりと牙を剥きながら近づいていく



