恋を知らないきみへ

書類が入った茶封筒を受け取ると、桃果が「よろしくね」と微笑む。
そのついでとばかりに、ふと私のデスクを見やった。

「ほのか、今日外回り帰ってきたらお昼でも一緒にどう?」

「あー……」

私は自分のイスに腰かけながら、「そうしたいのは山々なんだけど」とため息を漏らした。

「なに、忙しいの?」

「お昼休みは、打ち合わせ入ってて……」

「へぇ。なんの?」

「例の、ブランド立ち上げの件で。マーケの木ノ下くんと」

「───えっ!まだやってんの!?」


桃果の中ではすっかり忘れていたらしい。

すかさず私のパソコンを覗き込み、チャット画面のままになっていたそれを勝手に読む。


「……えぇっ、ほのかのスケジュールやば」

「まあ、仕方ないんだよね。今だけ忙しいだけだとは思う。来週までにブランドコンセプト決めないといけなくて」

一日の中で三回話し合っても、たぶん決まらないのも目に見えている。
来週もきっと、ギリギリまでこの話し合いは続くはずだ。

すっかり桃果は引いてしまっている。

「話がデカくなってる……」

「いや、あくまでベースを作るだけだよ?」

「そうは言ってもさ、期待値ハンパないね」

「……そうかな」

「そうだよ。営業部長とマーケ課長がそこまで任せるって、普通じゃないって」

「……うーん」