恋を知らないきみへ

出勤早々、パソコンを立ち上げるなり、社内チャットで木ノ下くんから連絡が入っていた。


【今日の空いてる時間、短くてもいいから教えて】


今までの木ノ下くんなら、もっと事務的な文章を送ってきそうなのに。
今日の一文は、拍子抜けするくらい短かった。

素早く今日のスケジュールを確認して、びっしり埋まった予定の中に、どこか隙間はないかなんとか探す。
タブレットとにらめっこしながら、チャット画面に文字を打ち込んでいく。


【午前中は外回りに行くけど、お昼には帰社する。また社食で打ち合わせできるよ。十四時から別件の会議と商談があるから、終わり次第夕方に少し時間が取れると思う】

ここまで書いて、手を止める。

……本当に、ものすごく私の都合で全部動かすことになっちゃうな。
昨日「合わせる」と言われたからって、こんなに甘えてしまっていいんだろうか。


罪悪感さえ覚えてしまうけれど、木ノ下くんなら無理な時は無理だと言ってくれるはず。

ひとつ息をついて、続きを打ち込んだ。

【あとは十七時半に取引先とオンライン会議が終われば、夜なら時間は取れるけど。遅くなっちゃうと思う】

───つまりは、簡単に言えば残業。