恋を知らないきみへ

それなのに、桃果はどうしてなのか食い下がる。

「千崎さんなんてさ、ガッツリ結婚適齢期じゃん。そのうちプロポーズされるかもよ?」

「予定はないよ」

「あんなイケメンと付き合える人生送りたかったわ。私は千崎さんレベルの男と隣を歩けない……!ほのかだから許されるんだよ」

「なにその偏見。全然普通だよ」

「……天性の人たらしに言われたくなーい」

もしくは魔性の女、と付け加えられたけれど、私は気にせずにランチを食べ続けた。


彼との結婚は、本当に考えたことが一度もなかった。
想像もしたことがないし、なぜかそうなる未来が思い浮かんだことがない。

ただ、もう少し年月を重ねたらそのうち自然とそういう話が出るのかな、とは思っているけれど。


誰かが結婚したから私もしたい、とか。
結婚適齢期だから自分もそうなりたい、とか。

流されたくはなかった。


話を違う方向へ持っていこうかと周りを見ていたら、一人の男を見つけて「あっ」と思わず声が出た。

「ねぇ、桃果」

「ん?」

どんぶりに残った米粒を丁寧に集めている桃果に、なんとなく身を寄せる。

「あそこ、向こうのテーブルの一番隅に座ってる人、分かる?」

私が視線を送った先を辿るように、桃果も怪訝そうに遠くを見つめた。

二人で「どこ?」とか「二列先の向こう」とか、やや揉めているうちに、やっと彼女が誰のことを指しているのか分かったらしくうなずく。