恋を知らないきみへ

中会議室に集まったのは、昨日と同じ。営業部長とマーケティング部の課長、そして私と木ノ下くんの四人だけだった。


昨日作り直した資料が、テーブルの中央に並べられている。

営業部長は一ページずつゆっくり目を通し、最後まで読み終えると資料を静かに閉じた。

その隣でマーケ課長も同じようにページをめくり終え、小さくうなずく。

二人が顔を見合わせるその仕草にドキドキしていると、営業部長が笑った。


「うん、これでいこう」


その一言で、張り詰めていた空気が少しだけほどけた。

思わず隣を見ると、木ノ下くんも小さく息を吐いている。
どうやら安心したのは、私だけじゃなかったらしい。

営業部長は資料を軽く叩きながら口を開く。


「まずは二人とも、お疲れ様。短期間でここまでまとめたのは、正直よくやったと思う」

「「ありがとうございます」」

私と木ノ下くんの声が自然と重なる。


マーケ課長は資料を見つめたまま言った。

「営業とマーケでここまで一つの形にできたのは大きいね。普通はどちらかに寄っちゃうから」


私はつい木ノ下くんを見る。

ちょうど彼もこちらを見ていて、一瞬だけ視線が合った。
すぐにお互い逸らしたけれど、それだけで十分だった。