恋を知らないきみへ

呆気にとられてしまうほどの、膨大なデータをきれいに見やすくまとめたページ。
スクロールしていくほど、内容がすんなり頭に入ってくる構成だった。

無言でそれらを見ていると、彼は傍らに置いていた私のメモを手に取る。

「すごい色々聞いてきたんだね」

「妥協、したくなかったから」

「……俺も」


木ノ下くんはメモをざっと読んで、

「"洗濯物が一階で完結する"……これいい」

と反応した。

「それ私も思ったの!めっちゃいいよね!?」

「うん。二ページ目に入れよ」


すぐさま彼があっという間に作りかけの場所へ入力していく。
その速さが、私にはとても真似できるものではなかった。

「この人は?共働きなんだけど」

私が手元を覗き込んで、メモの一部を指さす。

「共働きなら、こっちに差し込むよ」

「うん」

パズルみたいに、ピタッときれいにはまっていく感覚を覚えた。
……たぶん、こんな感覚はこの仕事をしていて初めてかもしれない。


メモをもとに少しずつ組み合わさっていく画面を見ながら、私は不意に気がついて声が出た。

「……部長が言ってた意味、いま分かった」

「え、なに?どれ?」

「"生活が回る"って、みんな表現とか言い方は違うの。でも意味は一緒だった」


木ノ下くんは私のそれを聞いて、少し考えるように画面とメモを見比べる。

そして、伺うようにキーボードに手を置いて私と目を合わせた。

「……見出し、変えてみる?その方がたぶん分かりやすいと思う」

「どんなふうに?」

「"生活が回る"って結果なんだよ。その前に理由がある。だから……」

彼は説明しながら、カタカタとキーボードで文字を打ち込んでいく。

「"生活が回る"は残したい」

「うんうん」

「でも、それだけだと抽象的なんだよね。また部長たちに突っ込まれると思う。それを補うために、一行付け加える」