恋を知らないきみへ

お昼の社員食堂は、とても賑やかだ。

食堂のメニューのバリエーションが豊富で、カフェっぽい野菜たっぷりのサラダメインのものもあれば、きちんとした丼物だったり、定食系もある。

だから自然とお昼の時間帯に会社にいる時は、食堂を使ってしまう。


「あ、ほのかー!今日は外回りじゃないの?」

私が列に並んでいると、少し離れたところから同期の総務部の桃果(ももか)に声をかけられた。

桃果はすでに二人がけのテーブル席に座っていて、トレイには親子丼が載っている。

「こっちおいでよー」

「うん、ありがとう」


とりあえず適当に野菜が多めのランチを手にして、混雑する食堂の中にいる桃果の向かいに座った。

「お疲れ〜、ランチするの久しぶりだね!」

「お疲れ様。今日は午後から出る予定なの」

「そっかそっか、外かなり暑いから気を付けてね」

口いっぱいに親子丼を頬張りながらも気遣ってくれる優しさに、ふっと笑いが込み上げる。

私もサラダを口に運んで、食堂を照らす大きな窓から差し込んでくる真夏の日差しに少し気が重くなった。

夏の外回りは体力勝負だ。それと戦うのも営業の仕事。


「あ、小関さんだ!」

「ほんとだ」

「挨拶しろって。声かけてみ!」

「お前が行けよ」

後ろからそんな男性社員たちの声が聞こえてきて、ふと振り返る。
二人組の若そうな子がこちらを見ていた。

「「お、お疲れ様です!」」

「お疲れ様です」

いつも通りの声で返すと、その二人はにこっと笑ってトレイを持って違う席へ向かっていく。


「……ほのかってほーんと、人たらしだよねぇ」

桃果のその言葉に、私は「え?」と聞き返す。

「どこが?」

「手抜きのスキンケアでも綺麗な肌だし。薄化粧でも映える顔だし。ちょっと笑えば男女関係なく吸い寄せられちゃう」

「なに言ってんの、そんなわけない。みんな親切なだけ」

「ふふっ、まあ、ほのかのそういう性格も込みで虜になっちゃうんだけどね」

「ワケ分かんない」

首をかしげる私に、桃果は笑っていた。
先に食べ始めたからか、彼女のどんぶりの親子丼は残り少なくなっていた。