恋を知らないきみへ

「私の実家、新幹線で二時間かかるのでなかなか帰れないんです」

お皿を並べたり、コップを並べながら私が言うとお母さんが少し心配そうに声をかけてくれる。

「ご両親と気軽に会える距離じゃないのね」

「年末年始くらいですかね、帰れるのは」

……それでも、実家に帰省すると相変わらず温かく出迎えてくれる。それがなによりも心地いい。

久しぶりに両親に連絡してみようかな、なんて考えていたら。


ずっと黙っていたお父さんが、にこにこと嬉しそうに笑いながら言ってくれた。

「じゃあ、ほのかさんもたまに丞と遊びにおいで。一緒にご飯食べよう」

「たまにと言わず、毎回!ねえ、お父さん!」

「うん、そうだね」


お父さんとお母さんのやり取りに感動していると、良太くんがぴょこぴょことイスに座ったまま揺れる。

「ぼくも!ほのかと遊ぶ!」

「すっかりほのかさんのこと気に入ったねー!」

お兄さんに頭を撫でられて、満足そうに笑う良太くんが可愛らしい。


私の隣で唐揚げを一口食べた木ノ下くんが、

「美味っ!」

と、小さく笑った。

その一言を聞けただけで、今日ここへ来てよかったと思えた。


お母さんに教わった味を、いつか私も作れるようになろう。

そんな小さな目標が、ひとつ増えた。




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