恋を知らないきみへ

結局、私と良太くんはずっと庭で遊び続け、時折お兄さんやお義姉さんが声をかけてくれたりした。
そのうち、だんだんと私の緊張も解れてくる。

お母さんなんて汗だくで良太くんとシャボン玉対決を始めるものだから、楽しいひとときになった。


……肝心の、木ノ下くんは。

縁側に座って虫を見つけては、「良太」と呼んで渡すだけ。

それだけなのに、やけに良太くんは嬉しそうでもあった。


少し空がオレンジに染まりかけてきた頃、お母さんが時計を見て立ち上がる。

「よし、夕飯の支度するから待っててね」

それを聞いて、急いで私もその背中に声をかけた。

「……あの!私も手伝わせてください」

「ほのかさんは今日はゆっくりしていって」

「いえ、ぜひ手伝いたいんです」


庭からリビングへ行こうとしたところ、良太くんから寂しそうな「ほのかぁ」という声が聞こえて振り返る。

……まだ遊び足りなそう。

申し訳ないな、と思っていると良太くんがお兄さんにあっという間に抱っこされた。

「よし!じゃあちょっと公園に散歩でも行くか」

「ブランコ!」

「もちろん押してやる!」

お兄さん夫婦に連れられて、良太くんが軽快な足取りで家を出ていった。


ソファではお父さんがすっかり寝入っている。

「……小関さん、無理しなくてもいいよ」

木ノ下くんもそんなふうに言うけれど、私は本心からお母さんの料理を手伝いたくて言い出したので気にしない。

「大丈夫。色々お話もしたくて」

「……それならいいけど」

若干、心配そうにしているのかこちらを見ている彼に笑顔を返しておいた。