恋を知らないきみへ

「お庭にね、虫のヒミツキチあんの!」

「えっ、すごーい!見せて見せて」

「ほのかはなんの虫が好き?」

「ダンゴムシかなあ〜」

良太くんに手を引かれるまま、縁側から庭へ向かう。

「すみません、サンダルお借りします」

戸惑ったようにこちらを見る木ノ下家の皆さんへ会釈すると、

「大丈夫よ」

とお母さんが笑って送り出してくれた。


丁寧にお手入れされた、家庭菜園もしている様子の緑いっぱいの庭だった。

家庭的でまめなんだろうな、と思わせる木ノ下くんのお母さんの性格が伺える。


「ここっ!ヒミツキチ!」

良太くんが指さしたところは、庭の一角にある大きめの虫かご。

“秘密基地”の意味がよく分かってなさそうなところも可愛い。

「良太くんはこの秘密基地でどんな虫を育ててるの?」

「いもむし!」

「へぇー!大きくなったら何になるのかなあ?」

「えっとねぇ、えっとねぇ……、分かんない!」

素直な年相応の答え方に、笑いがこぼれた。

「そっか。じゃあ何になるか楽しみだね!」


私と良太くんのやり取りを聞いていたらしいお義姉さんが、縁側で呆気にとられたようにこちらを見ている。

「すっご……あの子人見知りなのにもう懐いた」

「丞より懐くの早いね」

お兄さんが鼻で笑ったからか、木ノ下くんは半分諦めたみたいにつられて笑う。

「……だから営業に向いてるんだと思う」