恋を知らないきみへ

リビングに通してもらうと、広い部屋に大きなテレビ、部屋にちょうどいいテーブルとソファ。
カウンター越しに、整頓されたキッチンが見える。

ソファには男性二人と女性一人、それからさっきの男の子がいた。


……めちゃくちゃ家族総出だ。
そう思うと、さらに身がすくむ。

ソファに座っていた若い女性が身を乗り出して興奮気味に足をバタつかせた。

「えーっ!丞がほんとに彼女連れてきた!」

「くそっ、なんだよめっちゃ美女じゃん」

やさぐれたように真ん中に座っていた男性がうなだれる。

「ねえパパ〜、あのお姉ちゃん、だれ?」

「丞の彼女だってー。むかつくなー、なんか腹立つなー」

「かのじょ?」


木ノ下くんには、お兄さんがいると言っていた。
お兄さん夫婦と、その息子さんがあの男の子。

……ということは、もう一人の穏やかそうな中年の男性がお父様。


「初めましてー。丞がお世話になっております、父でございます」

お父さんはふにゃっとした笑顔になって、丁寧にぺこりと頭を下げてきた。

私も慌ててそれ以上に深く頭を下げる。

「初めまして!小関ほのかと申します!本日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます!」


一瞬、リビングがシーンとなった。

不思議な空気になりかけたところで、木ノ下くんが冷静にぼそりとつぶやく。

「……商談じゃないからね、今日は」

「……はっ!!」

変な声が出てしまって咄嗟に口を押さえると、途端にリビングに笑いが起こった。


「いやいや、もう今のだけで好感度ハンパない!ほら、座って座って〜」

お義姉さんらしき女性が立ち上がって、私の背中を優しく押してくれる。

そのまま促されるまま、ソファに座らされた。
癖でつい「失礼します」と言ってから座ってしまう。