恋を知らないきみへ

背だけはやたらと高い男。
私と同期だから、入社式から研修までは一緒だったからなんとなく顔に見覚えはある。

だけど配属された部署も違ったし、関わりがなかったからイマイチぴんと来ない。

細身で、薄い水色のワイシャツに深いネイビーのスラックスがゆるっと見える。


ああ、だめだ。印象に残るほどの特徴がない。
だから、名前なんて当たり前に思い出せない。

重めの髪は、明らかに営業部にはいないヘアスタイルだ。
私の彼氏と正反対みたい。


そんなことを思いながら会釈だけした。
相手は私をちらりと見ただけで、なんの反応も示さなかった。


「小関さん、悪いね呼び出して」

「いえ」

課長に促されて小会議室スペースに腰を下ろすと、四人で向き合う形になった。

営業部二人と、マーケティング部二人。
これはなにか新しいことを始めるのかもしれない、と思いついた時。

ちょうど営業部長から話し始めた。


「呼び出したのは頼みがあってね。実は、若年層ファミリー向けに新ブランドを立ち上げる話が出ていて」

「新ブランド?」

私だけが聞き返していた。

もう一人の同期の彼は、なにも言わずに静かに聞いているだけ。
マーケ部側で課長からもうすでに教えてもらっているのかもしれないが。