恋を知らないきみへ

「じゃあせめて写真撮ろ?初デート記念」

すかさずスマホをかざすと、忍びのごとく音もなく顔を伏せた彼を見て私の心が折れかかる。

「そんなに嫌なの?写真撮るのも……?」

「景色だけでも記念になるよ。ほら、肉も撮りなよ」

「木ノ下くんの写真が欲しい!疲れた時に見たら回復するアイテムとして保存したい」

「……俺、栄養ドリンク?」


よっぽど私の表情や言い方が面白かったんだろう、彼は堪えきれずに吹き出していた。

「あははは、小関さん会社と全然違う」

「私も自分でそう思う」

スマホを持ちながら苦笑いしていると、不意に木ノ下くんの顔が近づいてくる。

「撮るなら早くして」

「……近い」

「撮るんでしょ」

「いや、心臓が」

「今日は何回、心臓出るの」


スマホに映っていたのは、顔を真っ赤にした私と、相変わらず無表情な木ノ下くん。


……でも。

ちゃんと隣に並んで写ってくれたことが、今日一番嬉しかった。