恋を知らないきみへ

『切れば?』

あっさりと、当たり前みたいに。

それが少しだけ意外で、肩の力が抜ける。

『……“似合わない”とか“もったいない”とか言わないんだ』

『ははっ、なんで俺がそんなこと言うの』

木ノ下くんはふっと笑うと、頬杖をついて私のスマホを返してきた。

『小関さんの髪は、小関さんのものじゃん』


───その一言で、背中を押された気がした。





「こうやって、毎朝まっすぐにアイロン三回くらい通すと流れも綺麗になります」

と美容師さんにお手入れのレクチャーを受けて、私は鏡に映る印象が全然違う自分に驚いた。


……軽い!頭が!軽い!

びっくりして何度も横に頭を振ってしまった。

「ふふ、すっごいイメチェンですねー!小関さん、小顔だからボブも似合いますね!」


切る前はあんなに渋ってた美容師さんが、今やなぜか私より嬉しそうにヘアセットをしてくれている。

「あ、ありがとうございます……」


素直に受け取るべきか、謙遜するべきか迷って、結局素直にお礼を述べた。




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