恋を知らないきみへ

疲れた日も。

うまくいかなかった日も。

彼にこうして触れるだけで、不思議なくらい元気になれる。


昔の私は、言わなくても誰かが気づいてくれることばかりだった。


「荷物重くない?持ってあげるよ」

「そっち自転車来るから危ないよ。こっち側おいで」

「グラス空いたけど、追加で頼もうか?」


そう言ってもらえることが当たり前すぎて、周りの優しさに甘えながら生きてきた。



でも木ノ下くんは違う。


言わなきゃ分からない。
だから私は伝える。

会いたいこと。
ハグしてほしいこと。
電話がほしいこと。
手を繋ぎたいこと。

そして、充電したいことまで。


木ノ下くんはそのたびに「面倒くさい」と言いながら、ちゃんと応えてくれる。


「……充電終わった?」

「まだ」

「はぁ。ほんと面倒くさい」

ため息をつきながら、それでも木ノ下くんは自分から私を抱き寄せた。

その腕の中が、今の私には一番安心できる場所だった。


人はみんな、親切だった。

でも。

「こうしてほしい」と伝えた先で、ちゃんと受け止めてくれる人がいることを、私は恋と呼ぶんだと思う。


恋を知らなかった私に、それを教えてくれたのは。

きっと、一生「好き」とは言ってくれない、この人だった。




°・*:.。.☆本編はおしまい°・*:.。.☆

おまけが続きます!