恋を知らないきみへ

「営業は──お客さまの反応を見た瞬間に、答えが返ってくるから、感覚が全然違うんだろうね」

「……なるほど。ダイレクトに来るもんね」

「そうなの。……だから私ね」

「うん」

相槌をうつ木ノ下くんに向き直って、決意のほどを言葉にする。

「新ブランドの一番最初のお客様、絶対契約取りたい」


それを聞いた木ノ下くんが、吹き出すように笑った。

「小関さんなら、すぐ取りそう」

「契約ひとつ取るの、本当に大変なんだからね!簡単には行かないと思う。……でも、これは絶対やるって決めてる」

「期待して待ってる」


ここで私は、飲みかけのお茶が入ったコップをテーブルに置くと、一度深呼吸して両手を広げた。

「なに?」

不思議そうにする木ノ下くんを、精一杯睨んでやる。
……けれど、私の意図は伝わらない。

仕方ないので、自分から抱きつく。

「……そういうことか」

と笑ったような声が聞こえて、木ノ下くんもコップを置くとちゃんと抱きしめてくれた。


「私も一個、不安なことがある」

「仕事?」

的外れすぎる彼の問いかけに、もはや笑いがこぼれてしまう。

「ううん。木ノ下くんと付き合ってからの私」