恋を知らないきみへ

……疲れてるんだろうな。

私が『帰るだけは嫌』と送ったから、きっと合わせてくれたんだ。
本人はそんなこと、一言も言わないけれど。

……でも、木ノ下くんはそういう人だ。


私はとりあえずお弁当の容器を重ねてまとめて袋に入れて、飲みかけのお茶を飲み干すとソファに座り直した。

隣で寝ている木ノ下くんの肩に寄りかかって、その温かさが心地よくて私も目を閉じる。


前回来た時もその前に来た時も、こうしてソファで二人でウトウトして、そして気づけば深夜になっていて慌ててシャワーを浴びて寝たんだっけな。

───とここまで思い返していて、それじゃだめだ!と慌てて身体を起こした。


「木ノ下くん! シャワー借りていい?」

声をかけたものの、彼は目も開けずに「いいよ」と返すだけだった。

……絶対聞いてない。

試しに聞いてみる。

「それとも一緒にお風呂入る?」

「……いいよ」

間髪入れずに返ってきた。

「いや、絶対聞いてないでしょ!」

当たり前に返事はない。


私は近くにあったクッションを、その顔に思いきり投げつけてやる。

「痛っ」と呻いていたけれど、それを無視してソファから立ち上がった。



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