恋を知らないきみへ

結局会うのはいつも遅い時間なので、必然的にまたテイクアウトしたものを木ノ下くんの家で食べることになった。

どうして私の家じゃないのか──単純に、木ノ下くんの家よりも遠いから。

電車一本乗り継ぎなしで行けるのは、便利だなと思う。


「そうは言っても、うちのマンションはけっこう駅から遠いけどね」

「でも色んなお店、いっぱいあって飽きないよね」

この日は幕の内弁当を二つテイクアウトして、二人でマンションまで歩いていた。


木ノ下くんのマンションは、彼が言う通り駅からはそこそこ歩く。
それに、ちょっと入り組んだところにあってまだ場所をちゃんと覚えられていない。


……来るのが三回目でも、意外とちゃんと緊張するものなんだな。
玄関でパンプスを脱ぎながら、先にリビングに行ってしまった彼の背中を見つめた。

リビングにお弁当を置いたのか、すぐに木ノ下くんがキッチンに戻ってくる。

1Kのこの部屋は、玄関入ってすぐがキッチンの構造だった。


冷蔵庫を開けているので一緒になって中を見ると、笑っちゃうほどスカスカだった。

「ふふっ、全然ないね。自炊しないの?」

「たまにはやるよ。でも仕事がある日は……ちょっと無理かな」

「今度なにか作ろうか?」

中からお茶を出した木ノ下くんが、コップを二つ私に渡してくる。

「……小関さん、俺の胃袋掴もうとしてるよね?」

「その手には乗らないって顔するの、やめてよ」


私たちがいまいち甘い空気にならないのは、こうしていちいち小競り合いをしてしまうからだと思う。
それは自分でもよく分かっている。

でも、どうしても考えるよりも先に口が動いてしまうのが私たちだ。