恋を知らないきみへ

五分くらい経ってから現れた木ノ下くんは、手に缶コーヒーとカフェオレを持っていた。

言われた通り会社から出てちょっと歩いたところにあるベンチに座って待っていた私は、彼を見つけてすぐに立ち上がって手を振る。


「ごめん、小関さん。めちゃくちゃ待たせちゃった」

お詫びのつもりなのか、カフェオレを渡しながら申し訳なさそうに目を伏せている。

「三十八分オーバー」

「……ほんとにごめん」

「……もー!そんなの気にしないに決まってるでしょ!」

そう言いながら、木ノ下くんの左腕に寄りかかった。


「いや、ちょっと待って。まだすぐそこ会社だし」

とものすごく周囲を気にしてるあたり、彼らしい。


「じゃああそこの角を曲がったら、手、繋いでくれる?」

「……考えておく」

「木ノ下くんは外では手を繋ぎたくないタイプ?」

「というか、外ではベタベタしたくない」

「手を繋ぐのはベタベタしてるわけじゃないよ」

「……見せつけてるみたいで苦手」

「私は木ノ下くんを見せつけたいの!」

ここでようやく、木ノ下くんが堪えきれなくなったのか吹き出した。

「……小関さん。普通は逆」


言い合いながら、彼が用意してくれたカフェオレのプルタブを開ける。
木ノ下くんもコーヒーを開けて飲んでいた。