恋を知らないきみへ

メッセージを読んで、緩みそうになる顔をなんとか気合いで引き締めた。

……仕事中だ、今は仕事中。

と思いながらも、スマホの画面に指を滑らせる。


『十九時くらいになりそう。木ノ下くんは?』


『同じくらい』


『デート?』
『デート?』
『デート?』

……しまった!三回も同じ文面を送ってしまった!

気づいた時にはもう既読がついている。

読まれはしたけれど、なかったことにして取り消そうか悩んでいるうちに次のメッセージが来た。


『帰るだけ』


木ノ下くんと付き合って分かったことのうちのひとつはこれだ。

メッセージの文面が、短文すぎる。悲しいくらい。

せめて家に来てくれたら、疲れていても頑張って彼の好きな唐揚げくらい作るのに。

まだ私の家に来ようともしてくれない。

木ノ下くんのマンションには二回だけ行ったけれど、二人とも仕事が忙しくてクタクタで、牛丼やピザをテイクアウトして食べて寝る、という色気もなにもないおうちデートだった。

彼の送ってきた『帰るだけ』は、たぶん『一緒に帰るだけ』の意味。


『帰るだけは嫌』

私がそう送ったメッセージは、そのまま既読無視された。
───と思ったら、十分ほどして返信が来た。


『考えておく』

木ノ下くんはたぶん、私の感情をめちゃくちゃ振り回してる自覚、一ミリもないんだろうな。

そう思ったらまた胸が落ち着かなくなった。



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