恋を知らないきみへ

「まずは新ブランドひと段落だねー!いつから本格始動?」

「来年の春夏くらいかな」

「とりあえずお疲れ様!」

「ありがとう」


社食のコップのお茶で乾杯をした私と桃果は、端の席は取れなかったので窓際の席を確保していた。

いつもと変わらず、社食は大盛況だ。

今日の桃果はカツ丼、私は冷しゃぶ定食。


「ほのか、そのワンピ似合ってるよ」

唐突に褒められて、私は彼女に借りたワンピースを見下ろす。
たぶん、ビジネスシーンにも合うようにシンプルで癖のないものを選んでくれたんだろう。

会社に置いていたカーディガンを羽織ったらきちんとオフィスカジュアルになった。

「ありがとね、急なお願いだったのに持ってきてくれて」

「連絡くれた時、まだ家にいたからね」

「助かったよ」


お互いまずは一口目のお昼ご飯を口に運んで、そして次の瞬間。
桃果が耐えきれないように持ったばかりの箸を置いた。


「……ほのか」

「うん」

「つまり……“そういうこと”だよね?」

「……あー、うん」

「いやいやいや、まだ相手が誰なのかも聞いてないのに!……うまくいったの?」

「……まあ、そうだね」

私が曖昧に答え続けるせいで、桃果の方が一向に箸が進まない。

「社内?社外?」「私は会ったことある?」「学生時代の人?」とかひとりでずっと悩んでいる。

申し訳なさすぎて早く話したいのに、彼女のひとりごとが止まらない。

どうしたものかと見兼ねていると、

「待ってね!当てるから!」

とか言い出したので、吹き出してしまった。