恋を知らないきみへ

人生で一番恥ずかしい瞬間を味わってしまって、両手で顔を覆った。

「待って、無理!重いでしょ」

「もっと食べた方がいいと思う。肉フェスとかラーメンフェスとか行ってみる?」

「……やだ、吐きそう」

「ははっ」

木ノ下くんはここでやっと、前みたいに笑ってくれた。
その笑顔に安心して、私まで表情が緩む。

「……分かった。肉フェスもラーメンフェスも行くから、好きって言ってくれる?」

「フェスは行くけど、好きとは言わない」

「さっきからひどい!」


ずっとキスもしてるし、ずっと身体も触ってくるのに、甘い言葉がなさすぎて今この展開が夢なのかと思ってしまう。

「私はこんなに好きなのに」

「うん」

「木ノ下くんの、そういうとこ。すっごいむかつくのに好き」

「……うん」

「好きって言ってくれないとこも、もう好き」

「……小関さんは、ほんと魔性だよ」


抱きしめて指を絡めながら、木ノ下くんは毒を吐く。

「好きになると、いつもそうやって一直線なの?……だとしたら落ちないやつ、いないと思うけど」

「……違うよ」

彼の腕の中で私は必死に首を振った。
そこだけは誤解してほしくなくて、真剣に。

「こんなに自分から好きって思ったの、木ノ下くんが初めてなんだよ。だから、伝え方が分かんない」

精一杯の勇気で、自分からキスをした。

「好きって言う以外に、なにか方法あるなら教えて」

「……嫌い」

「───もー!木ノ下くん!ぶった切らないでよ!」

思わず嘆いていると、今度はあちらからキスされた。