恋を知らないきみへ

口論しているうちに、木ノ下くんの腕が私の背中に回ってくる。
それはもう、あまりにも自然に。

だからつい私も彼に身体を預ける。

木ノ下くんの鼓動が聞こえて、ちゃんと速い。それに安心する。


「……何人にご飯誘われた?」

「分かんないよ。でもちゃんと断った」

「小関さんのそれは信用できない。誘ったやつらは断られたと思ってない、絶対」

「え!なんで?」


ここで初めて、木ノ下くんが目を逸らした。

「小関さんは、断り方がやさしい」

「……そんなことない、と思うけど」

まあ、実際には強い言葉を使っているわけではないから、絶対に違うとも言い切れない。


「好きな人がいるって言ったら、木ノ下くんに好きバレすると思って」

「なんだそれ。そんなことで分かるわけない」

「わかってよ!なんで察してくれないの!」

言った瞬間、キスで遮られた。


何度かキスを交わしたあと、木ノ下くんは私の肩にもたれる。
濡れている髪が、ひんやりした。

「……もう疲れた」

「えっ」

「小関さんに振り回されるの、疲れた」

「振り回してないよ!」

言い返しているうちに、木ノ下くんが身体を起こしたかと思うと、そのまま私を抱き上げてベッドへ運んだ。