恋を知らないきみへ

「嫌いって言った!?」

「言った」

「嫌いなのにキスしたの!?」

「不意打ちで好きとか言ってくるの、ずるいと思う」

「ねぇ、嫌いなのにこうして抱きしめるのおかしいよ!?」

「……うるさいな」

ものすごくわざとらしく、よく聞こえるように「チッ」と舌打ちされた。

「舌打ち!今したでしょ?」

「……舌打ちする俺のことも好きなんでしょ?」

「なんなの、ほんとに!」

「小関さん、ちょっと黙って」


言っていることとは裏腹に、木ノ下くんは噛み締めるみたいに私をぎゅっと抱きしめてくる。

その絶妙な力加減から、彼の私を大事にしたい気持ちが伝わってきてしまって、それもまた胸の奥がぎゅっと苦しくなった。


「……好きって言ってよ」

「嫌い」

「もー!ほんとにやだ!」

「うるさい小関さんが嫌い」

「じゃあなんでキスしたの!?」

「……なんでだろうね」

「キスした責任は?とってくれるの?」

そう問いかけた途端に、抱きしめられていた力が緩む。

「好きにさせた責任、……ちゃんととってよ」

離れたくなくて私だけまだ手を離さないでいると、木ノ下くんに無理やり剥がされた。


彼は困ったような、諦めたような、そんな顔で少しだけ笑った。

「……とるよ」

それだけ言われて、手を引かれた。




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