恋を知らないきみへ

二人で前みたいに話せるようになって、ちゃんとイライラもしたし、ちゃんと言い返したし、ちゃんと楽しかった。

……でももう、その二人の時間も終わる。


「……『きみのこと、嫌いだと思う』」

不意に口にした私の言葉に、木ノ下くんが驚いたように目を丸くした。

「───えっ?」

「覚えてる?このプロジェクト始まった時に、木ノ下くんが私に言った言葉」

「……まあ、覚えてるよ」

「これ、ずーっと消えなくてさ」

ふっと自然に笑みがこぼれる。

あの時の私は、木ノ下くんという人物が読めなくて、出会ったことのない人種だと思っていて。
彼と仕事をしていくのは無理なんじゃないかと思うほどだった。

でも、今はそうじゃない。


「私、木ノ下くんと仕事できてよかった。少しは成長できたような気がするの」

電車がホームに滑り込んでくる。
ふわりと風が舞い込んできて、隣に立つ木ノ下くんの髪が揺れる。

彼はポケットに手を突っ込んだまま、ただこちらを見ていた。

「今日、楽しかったよ」

私がそう言うと、木ノ下くんも小さく笑った。

「成果出たしね」

「そこなの?ほんっと夢がない」

「夢じゃ資料は完成しない」

「……それはそう」

「お腹空いた」

「シャワー浴びたいよー」