恋を知らないきみへ

その後も会議は滞りなく進んだ。

モデルハウスで流す動画の長さ。
パンフレットの写真。
営業がお客様へ渡す比較表。

部署ごとに意見を出し合いながら、少しずつブランドの形が整っていく。


「最後に価格帯についてだけ確認して終わろうか」

細かな確認をひと通り終えたところで、部長の声とともにスクリーンが最後のページへ切り替わった。


競合他社との比較表だった。

設備内容や価格帯、標準仕様。

数字が並んだ資料を見ながら、マーケ課長が説明を続ける。

「現状では、この価格帯で勝負する予定です」


部長がスクリーンを見ながら腕を組む。

そしてそばに座る広報担当者と何か話したあと、私へ視線を向けた。


「営業の視点で、お客様へこの価格をどう説明する?」

まっすぐ私を見ているので、私に聞いているのは明白だ。

この話題を振られるとは思っていなかったので、少し驚く。

「価格ですか?」

「うん」

部長はうなずいて、資料を指差した。

「例えば競合と比べて二十万円高い理由。何を一番の価値として伝える?」


そう尋ねられて、私は急いで資料へ視線を戻す。

───他に比べて二十万円高い。

収納、家事動線、標準設備。

頭の中で情報を整理しようとするも、途中で引っかかってしまう。

……違う。これ、営業だけで答える話じゃない。