恋を知らないきみへ

食べかけのオムライスをスプーンですくったところで、今度は設計部の同期の女性が来た。

そんなに特別仲がいいとかではないけれど、会えば立ち話をする程度の子だった。

「ほのかちゃん、お疲れー」

「お疲れ様」

わざわざこうして話しかけてくるなんて珍しいなと思って返すと、よくよく見たら彼女の後ろに二人の男性社員。


「今度さ、同期何人かで飲み会したいねーって言ってたんだけど。ほのかちゃんも来てくれない?」

「えっ、同期か……」

木ノ下くんも来るのかな、とついつい考えてしまう。

「ほのかちゃんと話してみたいっていう人、けっこういるからさ」

「んー、どうかな」

「日程とかチャットする!」

「……いや、やめておこうかな」

やんわり断っているというのに、後ろの男性二人がめちゃくちゃこちらを見ている。

……ここまで露骨だと、さすがにちょっと怖い。


私の返事は絶対聞こえていたはずなのに、彼女たちはそれを聞かなかったみたいに行ってしまった。


桃果の低い声が聞こえる。

「……そうなるよね」

「なにが?」

「いや、だってそうじゃん」

ほぼ食べきったオムライスの米粒を集めた桃果は、私になにかを言おうとしたのか口を開く。

でもそれは、別の人に遮られた。


「小関さーん!」

また、名前を呼ばれる。

今度は誰!と思いながら振り返ると、企画部の三十代半ばの男性。
だいぶ前に、とある案件で関わった人だった。

ものすごく慣れた感じで隣に座ろうとイスに手をかけている。

「久しぶり。元気だった?」

「あ、はい。お疲れ様です」

このままじゃ座られる、と悟ったのでそこへバッグをどん!と置いてみた。

男性の手が止まる。
でも、全然押しが止まらない。

「よかったらさ、連絡先教えてくれる?……いやいや、下心とかじゃなくてさ、そのうちご飯とか行けたらなーって思ってて」

……ここまで無神経なのも逆にすごい。


「──ご、ごめんなさい。私そういうのはちょっと……」

さすがにはっきり断ってしまった。

『下心じゃない』と言ってる時点で、下心しかない。