恋を知らないきみへ

いつ食べるのかと密かに心配していたものの、ここでようやく彼女がオムライスを食べ始めた。

「ほのかを嫌う人なんてこの世にいるの?」

「いるよ」

「……ん?あれ、誰だっけ。ほのかが前に言ってたよね。嫌われてる人がいるって……誰だっけ」

「あーだめ!思い出さないで!」

「誰だったかなぁ……」

思い返せば、ヒントになりうる相談はこれまでも桃果に何度かしてしまっていた。


私の焦りをよそに、さっきまでの遅れを取り戻すように桃果がオムライスを次々に口へ運んでいく。

「……ほのかさ、もしかしてもういろんな人に声かけられてない?」

「なにが?」

「いや、だって千崎さんと別れたって話……わりと広まってるから」

桃果はものすごい速さでオムライスを食べ進めながら、何か言いたそうにこちらを見ている。


なんのことなのか分からず首をかしげていると、空になったお皿が乗ったトレイを持った営業企画部の男性の先輩が近づいてきた。

「あ、小関さん。お疲れ様ー!」

「お疲れ様です」

私が会釈すると、先輩はちらりと桃果を見やったあとこちらに視線を戻す。

「今日って帰り何時頃になる?メシ行かない?」

「あー、残業になりそうなんですよね。ちょっと時間までは見えなくて……」

「そっかそっか」

先輩は軽い口調でそう言うと、すぐにトレイを持ち直して

「じゃあ、また今度誘うよ」

とさっさと行ってしまった。

……行くとも行かないとも答えていないのに。