恋を知らないきみへ

会議はそのまま滞りなく進んでいく。

標準設備の色。モデルハウスに置く家具。営業資料に載せる家族構成。


木ノ下くんは必要な場面では私に意見を聞き、私が答えれば短く返事をした。

名前を呼ばれるたびにいちいち反応しそうになって、平静を装うのが大変だ。

「小関さん、この写真、接客で使いやすい?」


……今は仕事。今は仕事。
言い聞かせながら、問いかけにはちゃんと答えていく。

「もう少し部屋全体が見える方が説明しやすいかも」

「じゃあ、引きの写真も追加してもらおう」

「あと、前に出してくれたお客様の質問を一覧にできる?」

「うん。今週中でいい?」

「いいよ。できたら共有して」

それだけのやり取りなのに、呼吸が浅くなる。


仕事に必要なことは話してくれるし、目も合わせてくれるようになった。

私の意見を聞いて、きちんと受け取ってくれる。

周りから見れば、何もおかしくないはずだ。
同期同士が、同じプロジェクトの担当者として話しているだけ。


でも、以前はこんなふうに、話すたびに会話がきれいに終わることなんてなかった。

用件が済んだあとにも、どちらかが何かを思いついて、もう一度話が始まった。


会議の流れから逸れて部長に戻されることもあったし、意見がぶつかれば、会議が終わったあとまで話し続けた。

今は、必要なやり取りが終わると、見えない線を引かれたみたいに言葉が止まる。