恋を知らないきみへ

「ほのかは自覚ないかもしれないけど。……俺には、ずっと“ちゃんと”だった」

ここで言われるまで、そんなことを考えたこともなかった。


私は侑樹さんのことを、大切にしているつもりだった。

好きでいるつもりだった。

一緒にいる時間を、楽しんでいるつもりだった。

……でも全部、“つもり”だった。


「俺のこと、嫌いじゃないんだよね、きっと」

侑樹さんが静かに言う。

「うん。嫌いじゃない」

「大事にもしてくれてたと思う」

「……うん」

「でも、それってたぶん、恋愛の好きとは違うんだよ」

彼が言うひとつひとつが重くて、それでも逃げちゃいけないと噛み締める。
同時に胸の奥が苦しくなった。


「……ごめん」

また、それしか出てこない。
こんな自分が情けなくて、でも泣くのは違うと唇を噛む。

侑樹さんは少しだけ眉を下げると、今度は深く息をついてこちらを向いた。


「俺も謝らなくちゃいけない。ごめん」

「え?」

「この前、会社で」

たったそれだけなのに、金曜日のラウンジのことだとすぐに分かった。

「ほのかは嫌がってたのに、一方的にキスした」

「……」

「あの時は、誰も来ないと思ったし、付き合ってるんだからいいかなって思ってた」