恋を知らないきみへ

急な質問だった。

───でも。
本当は、急じゃなかったのかもしれない。

今日の食事中、何度もその答えを聞かれていた気がする。


水族館へ行きたいか。
楽しいか。
美味しいか。

───全部、同じことだったのかもしれない。


私は侑樹さんの横顔を見つめた。

好きかどうかなんて、これまでは考えるまでもないと思っていた。

優しくて、格好よくて、仕事もできて。
なにより、私をすごく大切にしてくれる。

一緒にいるのが当たり前になっていた。


「……うん」

答えた声は、自分でも驚くほど小さかった。

「ちゃんと、好きだよ」


その言葉を口にした瞬間、侑樹さんがゆっくりと目を閉じた。
苦しそうにも、呆れたようにも見えた。

「……そっか」

「うん」


きちんと答えたのに、自分の胸の中には何も落ちてこない。

好きだと伝えたはずなのに、安心もしない。

侑樹さんの顔を見ても、今すぐ抱き締めてほしいとも思わなかった。


───違う。
なにもかもが、違う気がする。

何が違うのかを考えようとした時、口が先に動いていた。

「好き……、だと思ってた」


侑樹さんが、ゆっくりと私を見る。

自分で言った言葉なのに、意味を理解するまで時間がかかった。