恋を知らないきみへ

運ばれてきたパスタを、今度は私が二人分取り分ける。

侑樹さんが選んだトマトパスタ。
海鮮の具材がたくさん載っていて、見た目も華やかだ。

以前なら、ただただ美味しいと二人で言いながら笑い合っていたと思う。


パスタの麺をフォークに絡めて口に運んで、私は彼に笑いかけた。

「これ美味しいね」

そう言うと、なぜか彼は私の顔をじっと見た。

「侑樹さん、どうしたの?」

「ほのか、美味しい?」

「うん、美味しいよ」

「じゃあ、楽しい?」

今度は全然違う質問が飛んできて、思わず答えに詰まりそうになってしまった。

「……うん。楽しいよ」

自分ではいつも通りに答えたつもりだった。

けれど、侑樹さんはそれ以上何も言わなかった。


食事が終わるまで、いつものように他愛もない会話は続いた。

仕事のこと、最近見た映画のこと、暑さのこと。
駅前に新しくできたお店の話や、侑樹さんの行きつけのダーツバーの話。

けれど、どの会話も少しずつ短かった。

私が相槌を打って答えると、それで終わってしまう。
侑樹さんも、話を広げようとはしなかった。


店を出る頃には、外はすっかり暗くなっていた。

夜になっても、空気は昼間と変わらず蒸し暑いままだった。アスファルトの熱が足元から上がってくる。