恋を知らないきみへ

生まれてこのかた、人間関係で苦労したことがない。

それは私自身、周りに恵まれてきたからだと思う。


ドラマや漫画でよく見るドロドロした展開になったり、あからさまないじめだとか、見るに堪えない暴言とか、そういうのに出くわすことなくここまで生きてきた。

たぶん、裏側にはそういうのも少しはあったかもしれない。

それでも私はわりと、色々な人たちに可愛がられて、親切にしてもらっているなって自分でも実感している。


今も、そうだ。

ハウスメーカーに勤めて六年。
上司や先輩もいて、後輩もいて。たくさんのことを任されるようになってきたこの頃。

仕事は充実していた。

彼氏と呼べる人もいて、恋も順調だった。


それはこれからも続くんだと、勝手に思っていた。


「あ、小関さん。ちょっといい?」

いつも温和な表情で接してくれる営業部長。

その部長に呼ばれて席を立つと、小会議室スペースまで連れてこられた。


そこにいたのは、マーケティング部の課長ともう一人。

課長とは何度も仕事をしてきたから分かるので、「お疲れ様です」と挨拶をしたものの、もう一人は───

同期だけど、同期の人なんだけど。
……名前、なんだっけ。