恋を知らないきみへ

「……それもさ、ほのかはいつも言うよね。“俺なら大丈夫”って」

思いがけないことを言われて、箸を止める。

「……だって、侑樹さんはちゃんと仕事できるし」

「うん」

「いつもなんとかしてるから」

「うん」

返事はするのに、侑樹さんはもう笑っていなかった。


「──でもさ。俺が大丈夫じゃなかったら、どうする?」

「えっ……」

「仕事したくないとか、全部投げ出したいとか言ったら。ほのかは、そんな俺になんて声かける?」


そんな侑樹さんを、想像したことがなかった。
そもそも、そんなことを言い出すなんて思ってもみなかった。

彼は仕事が好きで、要領がよくて、いつも自信があって。
困った時も笑いながらなんとかする人だと思っていた。


「……どうしたの?疲れてるの?」

私が聞くと、侑樹さんは小さく笑った。

「ほら。そうやってすぐ心配する」

「え、だって……」

「大丈夫、疲れてないよ。別に今、仕事を投げ出したいわけじゃない」

「じゃあどうして?」

「……なんとなく聞いただけ」

彼は残っていたビールを一気に飲んだ。


一見穏やかにも見えるその横顔を見ながら、何かを間違えたような気がした。

でも、何を間違えたのかは分からない。