恋を知らないきみへ

いつもの店に着くと、店内は平日の夜らしくほどよく混み合っていた。


奥の二人掛けの席へ案内され、向かい合って座った。

侑樹さんはメニューを開くなり、慣れた様子でたくさんあるメニューの中からすぐに料理を選んでいく。

「とりあえずビールにするか」

「……うん」

「ほのかもビールでいい?」

「あ、私は……今日は烏龍茶にしようかな」

何気なく答えると、彼が少し不思議そうに首をかしげた。

「烏龍茶にするの?珍しいね」

「うん、ちょっと頭痛くて……」


口にしてから、しまったと思った。

隠しておけばよかったのに。こういうことにまで気を回せない時点で、今日の私はおかしい。


案の定、侑樹さんは心配そうに眉を寄せた。

「大丈夫なの?」

「朝飲んだから、もう平気なの」

「無理して来なくてもよかったのに」

「そんなにひどくないから。ちょっと痛いなって思った程度だし」

「でも、体調悪いなら言ってよ」

「……うん。ごめんね」

それは本当にその通りだと思ったから、すぐに謝ってしまった。