恋を知らないきみへ

今日の待ち合わせは駅前にした。

先週のラウンジでのこともあったし、社内で待ち合わせをするのは、少し気が引けたからだ。


約束していた場所へ着いた時には、すでに侑樹さんがいた。

姿を見つけてすぐに声をかける。

「ごめんね、遅れた。お疲れ様」

「おー、お疲れ」

私を見つけた時から嬉しそうな笑顔を浮かべる彼を見て、チクッと胸が痛む。


……どうして、彼の笑った顔を見てこんな気持ちになるのか。
ここ最近の自分が、本当に分からない。

どこへ行くとも決めないまま、なんとなく二人で歩き出す。

こうして特に予定も決めずにご飯を食べる時は、いつも行くお店がある。
たぶん、そこに行くのだろう。


「お腹空いたなー」

「私も」

「毎日毎日、暑すぎるよ。いつになったら夏が終わるんだろ」

「ほんとだよね」

「営業は?忙しかった?」

「まぁ、いつも通りかな」

他愛ない会話をしながら、駅前の人混みをゆっくり歩く。

夕方になっても熱気は少しも和らがず、アスファルトから立ちのぼる暑さに思わず眉をひそめた。


そんな中で、侑樹さんがちょっと心配そうに私の顔を覗き込んできた。

「なんかさ、この間の週末もだいぶほのか元気なかったじゃん?」

「……そうかな」

「うん。あのめっちゃ美味いイタリアンでもテンション上がってなかった!」

「いや、ちゃんと美味しかったよ」

「そのわりにはあんまり笑ってなかったなーって」