恋を知らないきみへ

「あっ、そうだ。よかったらさ、ここ押してみない?」

手を繋いで、男の子にニコッと笑いかける。

照明のスイッチを指差すと、男の子はちょっともじもじしながらも、指をそっと差し出す。

ぱちん、と部屋が明るくなった。

「わぁ!ついた!」

嬉しそうな声に、お母さんが思わず笑う。

「すみません、うちの子ほんとに落ち着きなくて」

「全然ですよ。元気なのが一番です」


男の子は気に入ってくれたのか、今度は私の足にぴたっとくっついてきた。

「おねえちゃん!」

「ん?」

「これ、ぼくのおうち?」

「うーんとね、ここはみんなに見てもらうおうちなんだよ」

そう答えると、男の子は納得したように「そっか」と笑う。

我が子のその表情につられて、ご夫婦の肩の力も少し抜けたようだった。


家の性能や設備の説明を終え、一通り見学が終わる。
あちら側の聞きたいことや知りたいこともだいたい答えられたし、ひとまず今日はここまでとなった。

最後に私はアンケート用のメモを取り出した。