恋を知らないきみへ

この日も相変わらず社食は混んでいて、どの席からも雑談や笑い声が聞こえてくる。

ざわついた食堂の空いている席をいち早く見つけた桃果が、そこにドン!と自分のバッグを置いて列に並び出した。


「桃果は行動が早いねー……」

遅れて列に並びながら私がそう言うと、彼女は誇らしげに胸を張る。

「思い立ったら即行動しないとね。席の取り合いなんて毎日のことだもん」

「ふふ、さすが」

「ほのかはなに食べるー?私は週替わりランチ!」

「うーん……、冷やしうどんにしようかな」

足りなくない?と言われたけれど、今の私にはちょうどいい。


二人分の食事を受け取り、ようやく桃果がバッグを置いてくれていた四人掛けの席に腰を下ろす。

「「いただきまーす」」


桃果は週替わりランチの唐揚げをひと口食べるなり、大きく目を見開いた。

「うわっ、今日当たりだあ!」

「そんなに美味しい?」

「うん!外カリッカリ!中はジュワ〜!社食なのに頑張ってる!」

素直すぎる感想に思わず笑ってしまう。

「桃果って、本当においしそうに食べるよね」

「だってお昼は一日の楽しみじゃん」

そう言って幸せそうに頬張る姿は、見ているだけでこちらまで少し楽しくなる。