恋を知らないきみへ

……頭が痛い。

出勤早々、頭痛がしてトイレに逃げ込む。
ピルケースに入れていた鎮痛剤を取り出して、ペットボトルの水で飲み込んだ。


昨日の木ノ下くんとの会話を、嫌でも思い出す。

『避けてるよ』

『会社になにしに来てるの?』

『俺はああいうの、見たくなかった』

頭の中を彼の言葉がぐるぐる回るたび、胸の奥を、今まで感じたことのない何かにかき乱されているような気がする。

……なに、これ。


鏡に映る自分の顔は、どうしたらいいのか分からない、途方に暮れている顔をしていた。

こんなの、初めてだ。

洗面台の縁をぎゅっと掴む。


「小関さん?大丈夫?」

個室から出てきた先輩が、私の様子に気づいて声をかけてくれた。

慌てて身体を起こして姿勢を戻す。

「あっ……、大丈夫です」

笑顔は──たぶん作れた。


バッグを肩にかけ直すと、急ぎ足でトイレから出た。