恋を知らないきみへ

月曜日の午後。

週明けのブランドプロジェクト会議は、いつもよりさらに大きな会議室で行われることになっていた。


新ブランドの立ち上げを任されたばかりの頃は、パーテーションで区切られただけの狭い打ち合わせスペースで、木ノ下くんと二人きりで話すことが多かった。

どんな家を作るのか。

誰のためのブランドにするのか。

何を一番大切にして、何を諦めるのか。

何もないところから始めたから、意見がぶつかるたびに話し合った。


私がお客様の立場から現実的な話をして、木ノ下くんがブランドとしての軸を譲らない。

何度も険悪になり、この人とは絶対に分かり合えないと思った。

───それでも。

そうやって二人で作った土台の上に、今は設計部や広報、商品企画部をはじめ、いくつもの部署が加わっている。

会議室も、回を重ねるごとに広くなった。
関わる人も、机の上に並ぶ資料も増えている。


私と木ノ下くんの頭の中にしかなかったものが、少しずつ図面になり、言葉になり、本当の家になろうとしていた。

それは、素直に嬉しかった。