ちょうどそこに、食べ終えた食器を片付け終えた木ノ下くんが私に気づいて眉を寄せるのが見えた。
「……あれ?ご飯は?」
「ん?……なんか、今日はもういいかなって」
彼は私のトレイを見て、驚愕している。
「“もういい”って、半分も残してるじゃん。ちゃんと食べなよ」
「違うの、食欲がないわけじゃなくて……」
「え?どういうこと?」
まったく意味を理解していない彼をよそに、私もトレイを返却口へ置く。
「お昼休みに“ちゃんと休む”って、こういうことなのかもって……今日、分かった気がした」
「……へぇ。逃げてきたんだ」
するりと言われたその言葉にハッとして彼を見つめてしまった。
でも、木ノ下くんはそれ以上追求してくることはなかった。
私が言いたいことを理解したのか、興味がないのか、あえて聞かないのか。
どれなのかは分からないけれど、私たちはなんとなく二人で社食を出た。
エレベーターに乗り込むと、ほかにも何人かが乗ってきた。
動き出したエレベーターの中で、彼の方が先に話し出した。
「うちの課長が、週明けにまた進捗会議やるって言ってた」
「あ、そうなの?」
「チャット来てたよ。小関さん宛に、展示場での資料いくつか準備してほしいって書いてたから確認した方がいいかも」
「やばっ、ちゃんと見てないや。戻ったら見てみる。ありがとう」
「今日も忙しいの?」
何気なく聞かれた彼の質問に、私の頭に一瞬だけ侑樹さんとの約束がよぎる。
『十八時半くらいに会社出られそう?』
──だから、たしかにちょっといつもより巻いて仕事をしている自覚はあった。
「……うん、まあ」
「でも、ご飯は食べた方がいいよ」
「それは──大丈夫。あとでなんか軽食とるよ」
「なんだそれ。昼休みの意味なくない?」
「いいの、今日は」
いつもみたいに軽口を叩いているうちに、木ノ下くんが降りる階に着いた。
彼はこちらを見もせずに「おつかれー」と降りていく。
「……お疲れ様」
そう返した私はエレベーターの壁に背をつけて、周りに悟られないようにふっと息をついた。
••┈┈┈┈••
「……あれ?ご飯は?」
「ん?……なんか、今日はもういいかなって」
彼は私のトレイを見て、驚愕している。
「“もういい”って、半分も残してるじゃん。ちゃんと食べなよ」
「違うの、食欲がないわけじゃなくて……」
「え?どういうこと?」
まったく意味を理解していない彼をよそに、私もトレイを返却口へ置く。
「お昼休みに“ちゃんと休む”って、こういうことなのかもって……今日、分かった気がした」
「……へぇ。逃げてきたんだ」
するりと言われたその言葉にハッとして彼を見つめてしまった。
でも、木ノ下くんはそれ以上追求してくることはなかった。
私が言いたいことを理解したのか、興味がないのか、あえて聞かないのか。
どれなのかは分からないけれど、私たちはなんとなく二人で社食を出た。
エレベーターに乗り込むと、ほかにも何人かが乗ってきた。
動き出したエレベーターの中で、彼の方が先に話し出した。
「うちの課長が、週明けにまた進捗会議やるって言ってた」
「あ、そうなの?」
「チャット来てたよ。小関さん宛に、展示場での資料いくつか準備してほしいって書いてたから確認した方がいいかも」
「やばっ、ちゃんと見てないや。戻ったら見てみる。ありがとう」
「今日も忙しいの?」
何気なく聞かれた彼の質問に、私の頭に一瞬だけ侑樹さんとの約束がよぎる。
『十八時半くらいに会社出られそう?』
──だから、たしかにちょっといつもより巻いて仕事をしている自覚はあった。
「……うん、まあ」
「でも、ご飯は食べた方がいいよ」
「それは──大丈夫。あとでなんか軽食とるよ」
「なんだそれ。昼休みの意味なくない?」
「いいの、今日は」
いつもみたいに軽口を叩いているうちに、木ノ下くんが降りる階に着いた。
彼はこちらを見もせずに「おつかれー」と降りていく。
「……お疲れ様」
そう返した私はエレベーターの壁に背をつけて、周りに悟られないようにふっと息をついた。
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