恋を知らないきみへ

そこに自ら飛び込んだのが、山岡さんだった。

「小関さん、なに言ってんですか!自分のこと、分かってなさすぎです。どう徳を積めば、こんなに美人で、そのうえ性格までよくなるんですか?」

「違う違う、私は周りに恵まれてきただけで……」

「ふふっ、そういうところが人気の秘訣ですよねえ」

「……よく分かんない」

「話が分かるねー!君も営業の子?」


山岡さんはもはや、男性二人とすっかり盛り上がっている。

私は彼らの話に時折相槌を挟みながら、当たり障りのない笑顔を向けてサラダランチを口に運んでいた。


ふと、混雑する食堂を見渡していると見慣れた顔が視界に映る。

その顔を見た瞬間、ほとんど無意識に呼んでいた。

「木ノ下くん!」

名前を呼ぶと、こちらに顔を向ける。

彼はもう食べ終わったのか空になったトレイを手にしていて、食器類を下げようとしているところだったらしい。


昨日と違って、当たり前にアルコールが入っていない、いつものスンとした木ノ下くんだった。


「あ、お疲れ」

「お疲れ様ー。昨日は大丈夫だった?無事に帰れた?」

私としては、彼があのあとちゃんと家に帰れたのか心配だった。
かと言って、『家に着いた?』なんて気軽にメッセージを送るのもなんか違うと思ってしまって。

結局、会社で会ったら聞こうと思っていたのだった。


木ノ下くんは「あぁ」と思いのほかすんなりとうなずいた。

「うん、帰れたよ。ありがとね」

「そっか。ならよかった」

短い会話だけ交わして、彼はさっさと行ってしまった。