恋を知らないきみへ

ここで話していたら邪魔になるのでは、と少し場所を移して、もう一度向き合った。

「めちゃくちゃ顔赤いよ。何杯飲んだの?」

「三杯……いや四杯かな。酒飲むとこうなるの。気にしないで」

しゃべり方も、態度も、表情もいつもの木ノ下くんだ。

単純にお酒を飲んだら顔に出るタイプなのか。
その意外性に笑ってしまいそうになった。

「ふふっ……、可愛いね。真っ赤なの」

「小関さんは?みんなに囲まれてるじゃん。ちゃんと食えてる?」

……私の言った“可愛い”は完全に無視された。

「ちょこちょこ食べてるよ」

「それならよかった」


自然にみんなのいる座敷席に戻りながら、涼しい顔で仕事をしている時とは違う木ノ下くんの背中に話しかける。

「まだ飲むの?」

「うん、飲むよ」

「“大人数で飲むのは好きじゃない”って言ってたくせに」

「……酒は好き」

「ふーん、面白いねぇ」