恋を知らないきみへ

午後の打ち合わせの時間が押してしまって、暑さも相まって疲れが押し寄せる。

途中でコンビニに立ち寄り、冷たい缶コーヒーとペットボトルの水、それから眠気に負けないようにグミを買う。


乗り込んだ車の中で、帰社してからの仕事の流れを組み直す。

今日回ったお客様からの要望を取り入れた書類作成と、関連するところへの確認作業。
明日のための準備もこれからしなくちゃいけない。

……忙しすぎて、目が回りそう。


缶コーヒーを半分ほど一気に飲んでから、やっと車を発進させた。


運転して四十分ほどで、会社にたどり着いた。

その頃の私は疲れ切っていて、完全に力が抜けていた。


腕時計の時刻は、十六時ちょっと前。
お昼休憩もろくにとれなかったからか、体が重い。

ちょっとだけ───、五分だけ。

そう思って、まだほんのりひんやりしているペットボトルを頬に当てて、運転席のシートを倒した。


エンジンはかけっぱなし。エアコンの風量は最大。
涼しい狭い空間。ここが実は、一番落ち着く場所だったりする。

唯一、誰にも見られずに素の自分でいられる営業車。


パンプスも脱いで、足を折りたたんでシートに横になる。

「……気持ちいい」

ぼそっとつぶやいて、そのまま目を閉じた。