恋を知らないきみへ

お昼を適当に済ませ、次の訪問先へ向けて車を走らせていると、スマホが鳴った。

車に繋いでいたため、そのまま通話に切り替える。


「はい、小関です」

『お疲れ様ですー!山岡です!』

相手は営業部の後輩の女の子だった。

「あっ、お疲れ様ー。どうかした?」


こういう電話は珍しくない。社内から個別の用事で連絡が来ることはよくある。

山岡さんが電話の向こうでちょっと困ったように尋ねてきた。

『小関さんって、今日は何時戻りですか?』

「んー、たぶん十五時半には戻れると思うけど。何かあった?」

『マーケ部の木ノ下さんが戻り時間を聞きたいとおっしゃってて……』

「あぁ、木ノ下くん」


なにか確認したいことでもあるんだろうな、と悟ったものの、これからもう一件ある。

「急ぎなのかな?」

『いえ、小関さんが戻ってきたら連絡が欲しいみたいです』

「分かった。十五時半に戻ることだけ伝えてくれる?」


了解です!と元気よく山岡さんが返事したのを聞いてから、電話を切った。


そして私はそのまま午後の外回りのことで頭がいっぱいになって、木ノ下くんのことはすっかり忘れてしまった。



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